【受賞報告】第75回高分子学会年次大会

2026.07.17 / 研究報告
早稲田大学 | 理工学研究科 先進理工学専攻 TD2:小堺 俊典

早稲田大学先進理工学研究科先進理工学専攻一貫制博士課程2年の小堺俊典です。このたび、2026年3月および4月に開催された「第75回高分子学会年次大会」において、「含硫黄芳香族ポリマーを用いた電荷移動錯体からなる固体電解質のイオン伝導特性」という題目で発表を行い、優秀オンデマンド発表賞を頂きましたことを報告させていただきます。

 

本研究は、電荷移動錯体(CTC)を利用した高分子固体電解質(SPE)の開発と、そのイオン伝導メカニズムの解明を目的としたものです。従来の高分子固体電解質では、リチウムイオンはポリマーのセグメント運動に依存して輸送されるため、室温付近でのイオン伝導度が低いという課題がありました。本研究では、電子供与体と電子受容体から形成される電荷移動錯体を利用することで、セグメント運動に依存しない新たなイオン輸送機構の構築を目指しました。さらに、分子構造や電荷移動相互作用を制御することで、高いイオン伝導度を示すSPEの設計指針を明らかにしました。

全固体リチウムイオン電池は、高い安全性と高エネルギー密度を兼ね備えた次世代蓄電池として期待されており、その実用化には高性能な固体電解質の開発が不可欠です。特に、高分子固体電解質は加工性や柔軟性に優れる一方で、イオン伝導度の向上が大きな課題となっています。本研究を通じて、電荷移動錯体を活用した新たなイオン輸送機構に関する知見を得ることができ、次世代全固体電池の実現に向けた材料設計に貢献する成果を得ることができました。

また、本研究は高分子化学、電気化学、材料科学など複数の学問分野が融合する研究であり、材料設計から構造解析、電気化学評価までを俯瞰的に考察する力が求められます。PEP卓越大学院プログラムでは、このような幅広い視点や分野横断的な考え方を養う機会を数多く得ることができ、その経験が今回の受賞につながったものと考えております。

 

今回の受賞に際し、日頃より熱心にご指導いただいております小柳津研一教授に深く感謝申し上げます。さらに研究活動を多方面から支えてくださるPEP卓越大学院プログラムの関係者の皆様に心より御礼申し上げます。今後もより一層研究に精進してまいります。