- 電気を使うだけの時代から、
電気を作り、
貯めて、操る時代へ
- 人々の生活基盤に不可欠な電力・エネルギー分野の重要性が、かつてないほど注目されています。生活のあらゆる場面で情報通信技術の活用が広がり、ものごとの融合が促進され、新たな価値・サービスが生まれ始めているためです。なかでも近年は東日本大震災を契機として、電力・エネルギーのインフラ・システムについての制度改革が進行。わたしたちの生活や産業活動を支えるエネルギーの安定確保と安全で持続可能なエネルギーの導入が急務となっています。
そういった時代背景のなかで、一般家庭においても電力の需要と供給のあり方について非常に関心が高まっています。例えば各家庭で毎日使われている電気。これまで電気は貯めることができないといわれてきましたが、現在は蓄電の技術が発達して「作り置き」が可能に。例えば、太陽光発電パネルで電気を作り、貯め、うまく操りながら使う、といった電気の地産地消の流れが始まっています。
- 電気・エネルギーの
生産・流通・消費を
総合的に考える力
- 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー電源の大量導入のほかにも、ヒートポンプ給湯器などの熱エネルギー利用の電化、電気自動車の普及による移動手段の電化など、一般的にも広く認知され始めている持続可能なエネルギーシステムや分散型のエネルギーの活用は、環境に優しい省エネ電化社会を育みます。
電力・エネルギーの「生産・流通・消費」。これからの時代、この3つを総合的に捉え、ネットワーク化し、エネルギー需給を予測・把握するとともに総合的に管理・制御する力が必要です。ここで言う「生産」とは再生可能エネルギーの普及、「流通」はスマートグリッドによる送配電網の高度化、「消費」はスマート化すなわちデマンドレスポンス。これらは相互に密接に関係しています。
- PEPは日本の社会における
博士人材の認識を大きく変える。
元気づける、応援する
- つまりエネルギーマテリアル分野が担う「生産」から電力システム分野が担う「消費」までの産業全体を幅広い視点からとらえ、次世代電気・エネルギーシステムを社会に対して積極的に展開できる人材が必要です。そしてその人材育成のために生まれたのが、連携13大学による5年一貫の博士人材育成プログラム、【PEP】です。
そもそも今の社会において、博士人材に求められることは、大学などのアカデミアの場で活動することだけではありません。その高度な専門知識をもとに、産業界をはじめ、国際機関や行政機関など、社会の多様な場で活躍することが求められています。まさに【PEP】とは、そんな新時代に適応する博士人材を育て、日本における博士の認識を大きく変えていきます。そして、エネルギー未来社会を切り拓く卓越した博士人材を元気づける、応援する。取り巻く社会を活性化させる。それこそが【PEP】という名のルーツであり、【PEP】の何よりのミッションです。
- 早稲田大学 第17代総長田中 愛治
- 1975年早稲田大学政治経済学部卒業。1985年オハイオ州立大学大学院修了,政治学博士(Ph.D.)。東洋英和女学院大学、青山学院大学、本学政治経済学術院教授等を経て現職。2006年から本学の教務部長、理事、および世界政治学会(IPSA)President等を歴任。
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- FEATURE
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- 企業・研究機関、海外大学との連携
- 欧米では共同研究費などの予算で、世界中から優秀な博士人材を獲得し、産学連携によって研究成果をあげる仕組みが機能しているなか、日本ではこの面において大幅な遅れを取っています。この現実を打破するために【PEP】では、電力・ガス・石油・水素といった各エネルギー領域の企業群と連携しながら、産学連携によるエネルギー新産業創出のための実践的な研究教育を行います。合わせて、米国・欧州・アジアの各地域において、電力・エネルギー系研究を核となって推進している大学や研究機関とも連携し、国内とは違った視点のもと研究テーマを深化させていきます。
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- FEATURE
- 03
- 異分野融合教育の充実
- 電力・エネルギーがすべての産業のインフラへとつながる時代へと突入したなかで、新たな産業を創出するためには、電力とエネルギーマテリアル分野の専門知識だけではなく、その融合領域や環境経済、社会制度、法律、ビジネスモデルなど、様々な分野に対する問題意識を持ちながら、全体を俯瞰・デザインする能力を持つ人材が不可欠です。そのため【PEP】では、人文社会科学の科目も開発して必修とし、かつ積極的に現場演習を取り入れるなど、実践的に知識を修得する異分野融合による教育カリキュラムを充実させています。
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- FEATURE
- 04
- 実装実績に基づく国際標準化教育
- 昨今の技術進歩により、需要者側でも電力消費量を抑制・調整できる仕組みが整いつつあります。ここで大切なことは、電力供給のための安定した需要と供給のバランス。この電力網の安定化に貢献する仕組みのひとつが、デマンドレスポンスです。早稲田大学EMS新宿実証センターでは、このデマンドレスポンスの標準化技術を、産・学・官で社会実装した実績があります。【PEP】では、EMS新宿実証センターを一部開放し、電力・エネルギー相互運用性のための国際標準化教育を実施。講義と基礎演習・実装演習によって技術の国際的相互運用性について学修します。
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- FEATURE
- 05
- 充実した教育研究の
指導・支援体制
- 【PEP】では、博士課程前期と後期の連続年次をTD1〜TD5とした5年一貫制カリキュラムを構成。教育の質を継続して保証・可視化するために、学修活動を通じて得られる成果や能力を、複数の評価項目に分けて達成度を記した「ルーブリック」と、半期ごとの達成度を記録、確認する「学修ポートフォリオシステム」を活用していきます。カリキュラムにおいては、TD1年次より早稲田大学に共通の学籍を置き、大学の壁を超えた同一環境で授業を受けられるインターユニバーシティ型の卓越必修科目のほか、卓越専門選択科目、卓越俯瞰選択科目、5年間通した研究指導といった多彩な科目群を提供してます。
合わせて各種支援制度も充実。海外の大学や研究機関、企業などへの派遣の際の経費支援、必修科目履修にかかる経費の支援、授業料補助、各種奨学金の補助など、13大学がそれぞれの支援体制を整えています。早稲田大学が設立したスマート社会技術研究機構(ACROSS)に参画する、50社の企業向けハイレベルセミナーにも参加することができ、産業創出力の養成を行います。