資源循環とカーボンニュートラルを同時実現する革新的分離技術
サーキュラー・エコノミーとは経済性を持った資源循環を達成する概念です。循環には収集や分離に少なからずエネルギーを必要としますので、カーボンニュートラルと資源循環を同時達成するためには、可能な限り省エネルギー型の革新的な分離技術開発が必要です。さらには、分離技術をよく理解した製品の易分解設計も求められます。
当研究室ではサーキュラー・エコノミーを目指して、有価成分の高度分離技術およびプロセス開発、有害成分の高効率かつ安定した処理技術またはプロセス開発、そして、これら技術を高度化するためのシミュレーション技術開発を行っています。
また資源循環促進の仕組み作りや易分解設計の参考として頂けるように、資源循環のための分離技術の特徴を幅広い分野へ発信する活動を行っています。
具体的には、以下の3つのテーマに取り組んでいます。
(1) 資源循環を実現するための高度分離技術およびプロセス開発
粉砕・破砕、物理選別、湿式プロセス(沈殿・溶出・吸着)、高温プロセスを組み合わせ、社会的なニーズに沿った新規分離技術またはプロセスを提案しています。プロセスの提案にあたっては、高速カメラ顕微鏡観察やX線分析、磁気分析を駆使した固体分析、ICPやIC等を利用した溶液分析、ゼータ電位測定やAFM測定を駆使した界面分析など、適切に分離を評価するキャラクタリゼーションに注力しています。経済性をもって資源循環を達成するための分離プロセス構築には、対象に応じて、物理的な分離技術、物理化学的な分離技術、および化学的な分離技術の適切な組み合わせが必要ですが、当研究室では、それらの技術をほぼ網羅した研究チームを組織し、どのような対象にも適切な分離プロセスを提案可能な体制を目指しています。国内でもそのような組織は少なく、詳細な固体分析のツールを有していることも当研究室の特徴のひとつです。
(2) 資源利活用プロセスを支える環境浄化技術およびプロセス開発
主として無機有害元素を含む廃水や排ガス処理を対象として、高効率かつ安定した処理技術またはプロセスを提案しています。特に固液または固気界面での構造変化に着目し、有害元素が高効率に沈殿または吸着する環境材料や環境浄化プロセスの開発を実施し、(1)と同様に、適切に処理を評価するキャラクタリゼーションにも注力しています。固液界面での有害元素の挙動に着目し、それらの構造変化を理学的に把握するツールを持ちつつ、工学的に環境浄化技術やプロセスを高度化している点に特徴があります。
(3) 資源利活用技術を高度化するためのシミュレーション技術開発
固体同士の分離を可視化し、機構を解明するための粉体シミュレーションや、溶液内の沈殿・溶出・吸着の機構を解明し、反応速度を把握するための地球化学シミュレーション、高温プロセスにおける各種元素の状態を把握するための熱力学シミュレーション、電気パルス法による分離機構を解明するための電界シミュレーション、衝撃波伝搬シミュレーション、変形シミュレーションなどを行っています。資源循環の各種技術やプロセスを可視化し高度化するために幅広いシミュレーションツールを有している点に特色があります。
資源開発・資源循環のための分離技術の概念
所 千晴
ところ ちはる
早稲田大学 大学院創造理工学研究科 地球・環境資源理工学専攻・教授
プログラム担当者
専門:環境材料、リサイクル技術
- KEYWORD
- サーキュラー・エコノミー実現のための資源分離技術
資源開発・資源循環を支える環境修復・浄化技術
省エネルギープロセス開発のための粉体シミュレーション技術
- 略歴
- 2004年04月 - 2007年03月 早稲田大学 理工学部 助手
2007年04月 - 2009年03月 早稲田大学 理工学術院 専任講師
2009年04月 - 2015年03月 早稲田大学 理工学術院 准教授
2015年04月 より、 早稲田大学 理工学術院 教授
2016年11月 より、東京大学生産技術研究所 特任教授
2021年04月 より、 東京大学 大学院工学系研究科 教授
2021年04月 - JX金属株式会社 社外取締役
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