再生可能エネルギーを大規模に導入した離島電力系統の最適運用

千住 智信
琉球大学 工学部・電気システム工学コース・教授

脱炭素社会の実現のためには再生可能エネルギーの大規模導入が求められている。系統が連系されていない離島電力系統で再生可能エネルギーを大規模に導入するためには電力供給信頼度の観点から過剰な火力発電設備、再生可能エネルギー発電設備、蓄電池の導入が必要であり、供給電力コストは高価となってしまう傾向がある。また、再生可能エネルギーは風力エネルギーや太陽光エネルギーに依存して発電電力が決定されるため、当日の気象条件に応じて発電電力が大きく異なる。さらに、太陽光発電では雲等の影響により急激に日射量が急変する。

上記のような再生可能エネルギーの特徴から、再生可能エネルギーを大規模に導入して活用するためには、既存の電力系統、特に離島等の小規模独立電力系統(図1参照)では、再生可能エネルギーの比率を増加させるためには様々な課題がある。さらに、従来の火力発電機と再生可能エネルギー発電設備を協調させて電力供給信頼度が高く電力価格が可能な限り低廉な電力エネルギーをどのように供給するのかという課題も存在する。

本研究では、先ず再生可能エネルギーの不確実性に対処するために、翌日の風エネルギーや太陽光エネルギーの高精度予測手法を検討する。また、短時間で気象条件が変化する場合には風速や日射量の再予測により各発電設備や蓄電設備の運用を逐次修正する手法により対処する手法を検討している。各機器の運用では、電力系統が最小コストで運用が可能な最適運用手法を導入している。再生可能エネルギーの発電電力の不確実性に関しては、ロバストな最適化手法を導入することにより、様々な制約条件や不確実性を考慮して、電力系統の運用コストを最小化することが可能である。

再生可能エネルギーを大規模に導入して脱炭素社会を構築するためには、従来とは異なる電力系統運用の工夫が必要である。これまでの一方的な発電のみでは効率な電力系統運用は不可能であり、例えば電気自動車との協調(図2参照)により電力系統を運用する必要がある。そのため、発電側の設備だけの協調だけでなく、需要家側の負荷との協調が必要である。再生可能エネルギー導入量の拡大には、様々な系統運用上の工夫が求められている。

図1 離島電力系統

 

図2 電気自動車と再生可能エネルギー
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千住 智信

せんじゅう とものぶ

琉球大学 工学部・電気システム工学コース・教授

プログラム担当者
専門:電力システム工学、パワーエレクトロニクス

KEYWORD
再生可能エネルギーの大規模導入
電力系統の最適構成と最適運用
分散型電源を活用した配電系統電圧の最適制御
略歴
1988年 琉球大学大学院工学研究科電気・情報工学専攻修了
1988年 琉球大学工学部電気工学科助手
1994年 博士(工学)・名古屋大学
琉球大学工学部電気工学科助教授
1996年 グラスゴー大学客員研究員
2001年 琉球大学工学部電気電子工学科教授
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