新機軸を生み出すと、各種の法的手段により自分の技術革新を保護できる。通常、これらの手段は相互に排他的なものであり、どの保護手段が自分の利益にもっとも適っているか判断しなければならない。また、規模を広げて見ると、政策立案を行う場合、社会のため新機軸の開発を促進する上でどのような種類の知的財産権が最適なのか判断した上で、規制を設けて然るべく広範な使用を奨励しなければならない。以下の表は、新機軸を実現した場合の選択肢をいくつかまとめたものである。また、守秘を要する営業秘密の保護を求めるのか、それとも、特許庁を介した発明の開示を要する特許の保護にするのかという選択も、「オープン&クローズ戦略」として言及されている。価値ある発明に関して特許保護を選択した場合、その特許を実施する方法に加え、第三者に対してどの程度特許を公表していくのかという点でも選択を行うことになる。
特許を利用するのか営業秘密を用いるのかの誘因は、侵害があったときの行使可能性によってある程度左右される。私の研究のかなりの部分では、行使可能性のルールについてバランスが取れた枠組を整備することに力点が置かれている。有効な特許か営業秘密を保持している場合、侵害の可能性があるときには裁判所の手続において効果的に権利を行使できるようにすべきである。同時に、司法制度については、権利者に有利な形で装うべきではない。なぜなら、そのような形にしてしまうと、過剰に必要以上の執行が促される可能性があり、競争に萎縮効果を及ぼす恐れがあるからである。知的財産比較法の学者として、米国、英国、ドイツ、インド、中国などの各種主要各国の執行制度の進化を分析し、現地・国内的民事手続規則その他の執行関連の諸要因の観点から、日本その他の地域においてどのような種類の解決策を実施できるのかについて提言を練っている。