分散エネルギーシステムの最適化とディジタル統合
資源採掘から最終利用に至るまでをカバーするエネルギーシステムの最適化は、エネルギー資源の収集、輸送、変換、蓄積プロセスの複雑な接続系の、ライフサイクル全体に渡る評価期間での熱力学的な最適化問題として捉えることが出来る。また、システムの日々の最適な運用・管理のためには、予測の下での最適運用が行われる。そして、実運用における情報をシステム設計の現場へとフィードバックすることは、よりよい設計に寄与すると期待できる。
一方で、システムの制御・マネジメント系に強化学習の枠組みが組み込まれていれば、制御系そのものが「適応的に進化」することが期待できる。しかし、そのためには、状態を把握するために必要な十分なデータの定期的な収集と分析の仕組みが組み込まれている必要がある。このために、状態推定に十分な情報を、様々な分析を実行するためにディジタルデータとして収集することが望ましい。
現在、フィールドバスに代表されるディジタル通信規格は、プロセスオートメーションの分野において浸透してきている。また、上位システムへとゲートウエイを介してつながるための、様々な規格のセンサー情報のディジタル化は進行している。これはすなわち、センサー系が今や、センシング機能、すなわち、実環境の物理情報を信号すなわちディジタル情報に変換する機能と、通信する機能を併せ持ったデバイスからなる情報ネットワークシステムとなったことを意味する。
機械学習などのデータ駆動型のシステムを有効に機能させるためには、品質が担保された十分な量のディジタルデータへのアクセスが必要である。加えて、これまで入手出来ないために制御・管理に利用されてこなかった様々なデータを付加することで、AIの機能が発揮できるようになる。このため、新たな実環境をディジタル化するためのセンシング技術の開発は、システム制御・マネジメントの意味でも重要である。
このような状況のもと、様々な環境情報をセンシングする機能として有用なものを選択し、ディジタル化するデバイスを用いて、エネルギーの観点から最適なマネジメントシステムの設計論を研究する。具体的な研究サブテーマは以下の通りである。
1.大規模分散エネルギーシステムの最適システム設計
時間的・空間的拡張:個々の技術に対するライフサイクルを考慮し、地域に分散配置されたエネルギーシステムを、どのように有機的に結びつけるべきであろうか?そのような地域エネルギーシステムの提案と開発すべき実装技術を明らかにする。
2.大規模で階層的なシステムを必要最小限の構成要素で最適化するアルゴリズムの導出
大規模なシステムをそのまま最適化すると組み合わせの爆発により実現不能となる。そこで、熱力学の原理から最適なシステムを構築するための数理的方法論を明らかにする。
3.ロボティクスを用いた新たな環境情報のディジタル化
通常用いられるプロセスデータ以外に、これまで用いられることのなかった新しい情報を付加することで、AI技術の効果的な利用が可能となる。エネルギー情報を付加した3次元高精度地図の自動生成と、上位システムへの自然な接続方法の研究を推進する。
ドローンによる3次元高精度地図
天野 嘉春
あまの よしはる
早稲田大学 大学院基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙学科専攻・教授
プログラム担当者
専門:エネルギーシステム工学
- KEYWORD
- エネルギーシステムの最適化
サイバーフィジカルシステム
分散システムマネジメント
- 略歴
- 1991年 早稲田大学理工学部機械工学科卒業
1993年 同大学院理工学研究科修士課程修了
1994年 早稲田大学理工学総合研究センター助手
1998年 同センター客員講師
2000年 早稲田大学専任講師
2002年 同助教授
2008年 スイス連邦工科大学 客員教授
2008年 早稲田大学 教授
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