横浜国立大学の中村悠人です。
私は2023年4月から10月までの7ヶ月間、ドイツのヨハネス=グーテンベルク大学マインツ(Johannes Gutenberg-Universität Mainz: JGU)へ留学をしてきました。
JGUがあるマインツは、フランクフルト国際空港から電車で30分ほど南に位置しており、ルネサンスの3大発明の1つである活版印刷を発明したヨハネス・グーテンベルクの生誕地として知られています。また、町の中心部にある荘厳なマインツ大聖堂は、ドイツの3大聖堂の1つとして有名です。
この度の留学では、電気を使用した有機化学反応(有機電解反応)の研究で著名なSiegfried R. Waldvogel教授のもとで、反応開発の共同研究を行いました。有機電解反応は、通常は有害な酸化剤・還元剤を使用して実施される酸化還元反応を、電極表面での電子移動を利用して実施できる点で、環境に優しい有機化学反応として近年注目を集めています。今回の共同研究では、電気化学的な酸化反応を使用して、農薬などに使用される化学骨格の合成に取り組みました。
Waldvogel教授の研究室では、機械学習を使用して反応条件を徹底的に最適化しており、反応の大スケール化も実現するなど、反応の新規性のみに留まらない、実用面をも重視した反応開発が行われています。有機電解反応は私の専門分野でもありますが、機械学習や大スケール化にはこれまで取り組んだことがなかったため、非常に学びの多い共同研究になりました。
研究は幸運にも順調に進行し、現在は論文化に向けた準備が進んでいます。 研究は共同研究者であるPh.D studentたちと相談しながら進めてゆきました。留学以前の私は独立した研究テーマに取り組んでいたため、チームで研究に取り組む経験はこれが初めてでしたが、共同研究者たちは非常に人柄が良く、どんな相談にも気さくに応じてくれたため、刺激を受けつつも非常に楽しく研究に取り組むことができました。また、Waldvogel研究室は50名程度が所属する非常に大所帯の研究室ですが、大人数が効率的に研究を進められるよう、安全管理や機器利用に関するシステムが洗練されており、このようなシステムは可能な範囲で日本でも真似していきたいと考えております。
研究室の内外で良き友人に恵まれ、研究面以外にも非常に実りの多い日々を過ごすことができました。私はドイツ語を話せないのですが、研究室には留学生が多く在籍している上、ドイツ人も留学生のいる場では英語に切り替えてくれるため、言葉の壁を感じることなく会話を楽しむことができました。ドイツといえばビールのイメージが強かったのですが、やはりビールを飲む機会がたくさんあり、すっかりドイツのビールを気に入りました。また、マインツはワインの産地でもあるため、美味しいワインを飲む機会も多くありました。ドイツの人々はお酒に強く、日本人ではあり得ないような量を飲む人もいますが、飲酒を強要する人は誰もいなかったので、自分のペースでお酒を楽しむことができました(もちろん太りました)。
以上のように、留学期間中は研究面でもそれ以外でも、非常に充実した時間を過ごすことができました。私が出会った人々は、研究面だけでなく人格的にも尊敬できる方が多く、そのような人々に囲まれながら過ごした7ヶ月間はとても幸せなものでした。
PEP卓越大学院プログラム 海外長期派遣助成により留学資金の一部を助成いただいたお陰で、金銭面の不安なく、留学に専念することができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、研究面と生活面の双方において、留学中に私をサポートくださいました指導教員の跡部教授、信田助教、そしてWaldvogel研の全ての方々に御礼申し上げます。
Waldvoge教授と共同研究メンバー
大学のマラソン大会に参加
休日のお昼寝中に友達がこっそり撮っていた写真
共同研究者のMartinと朝市で乾杯