IoT/AI時代を拓く半導体テクノロジー

渡邉 孝信
早稲田大学 大学院先進理工学研究科 ナノ理工学専攻
基幹理工学研究科 電子物理システム学専攻・教授

世界的な半導体不足を契機に、半導体の重要性が広く認知されるようになりました。世界各国は巨額な投資を進め、我が国においても半導体製造基盤の確保・強化の取り組みが本格化しました。ただし、半導体が難しいビジネスであることに変わりはなく、時代に合あった新しい価値を提供し続ける不断の努力が必要です。

私どもの研究室では、図に示すような未来の最終製品イメージを2つ掲げ、それに向けて今、どんな研究をすべきか、バックキャストにより研究開発課題を設定しています。

1つはスマートダスト。地球環境にやさしい素材で構成された、砂粒のように小さな自立型センサです。これらをたくさんばら撒いて地球環境をきめ細かく観測できれば、現実空間とサイバー空間が融合したSociety5.0の実現に貢献できるのではないか、と考えています。実現するには、超低消費電力の回路技術、無線通信技術に加えて、環境中の微小エネルギーから恒久的に電力を産み出す「エナジー・ハーベスタ」が求められます。私が主宰する研究室では、集積回路と混載できる、シリコンを使ったマイクロ熱電発電デバイスの開発に取り組んでいます。

もう一つの未来イメージは、飛翔昆虫のように自由自在に移動する能力を持ったセンサ群で、データを集めるシステムです。スマートダストではばら撒かれた場所の状況によってはうまく発電できない恐れがありますが、センサ自身が移動手段を持っていればその心配がいりません。電池がなくなったら、基地局に戻って充電し直せばよいからです。私たちは、現在の技術で作製可能な、やや大きめの羽ばたき飛翔ロボットを用いて、機械学習による自律飛行制御技術の開発に取り組んでいます。将来、実際の生物の筋肉のような出力、伸縮比、応答速度を実現できる人工筋肉が登場した時に、いち早く人工の超小型羽ばたきドローンを実現できるよう、最も難しいと考えられる制御技術から固めておこうという戦略です。

持続可能な半導体エレクトロニクスの新市場を創造し、日本の半導体産業の再興に貢献したいと考えています。

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渡邉 孝信

わたなべ たかのぶ

早稲田大学 大学院先進理工学研究科 ナノ理工学専攻
基幹理工学研究科 電子物理システム学専攻・教授

プログラム担当者
専門:半導体界面物性、電子デバイス工学、計算物理

KEYWORD
半導体デバイス
熱電発電
分子動力学シミュレーション
略歴
2003年 早稲田大学 理工学研究科 講師
2003年10月 - 2007年03月 科学技術振興機構 さきがけ研究者
2005年 早稲田大学 理工学術院 助教授
2007年 早稲田大学 理工学術院 准教授
2012年 早稲田大学 理工学術院 教授