我々の研究室が所属している早稲田大学環境・エネルギー研究科において、環境・エネルギーという分野は、身近でありながら、災害・環境汚染などのますます深刻化する課題を対象としている。そのような社会の課題をベースに、環境・エネルギーネットワークの研究は、大規模グリッドである基幹電力システムや、個別グリッドであるマイクログリッドによるクラスター型電力システムを対象とする事になる。そこでは、環境負荷を低減することが期待される再生可能エネルギーを含む分散化エネルギーリソースとそのエネルギー消費である社会活動とを最適にネットワーキングする技術が要求される。特に、持続的な社会を形成するための電力システムは、強固な基幹システムを保持しながらも、耐災害性に強い柔軟な分散システムが必要となる。このような課題に取り組む研究として、エネルギー需要動向や社会制度を前提に、長超短期の戦略的な設備計画、その瞬間毎の保護運用制御の応用分野に対して、予測技術、不確実性を含む最適化技術、投資戦略を含む計画技術、システム制御・シミュレーション技術などの基盤技術を適用している。
さらに、現在では、「e-Asia諸国における拡張可能型のクラスターに基づくエネルギーインフラの研究」プロジェクトという東南アジア諸国の研究者との技術交流をとおして、早稲田大学側からは、再生可能エネルギーを含む分散エネルギーリソースのポテンシャル分析をもとに、地理空間情報技術を用いたネットワーク最適設計を提供する戦略計画ツールの構築の開発を実施している。
パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラムでは、学会活動や政府委員会などで構築されてきた専門分野の他大学教授陣との太いパイプを活用し、加えて産官連携における現実的な政策や事業課題について、本研究を推進することになる。いわば、環境・エネルギーネットワークの課題に対して、人のネットワークを活用した価値ある研究が「エネルギー社会システム最適化」という新学術領域として構築される。本研究に挑戦する学生は、このような幅広いネットワークに対し、憶することなく積極的に取り組んでほしい。そのための研究環境として、例えば、現在日本国内では課題とならない無電化対策技術ではあるが、それをさらに発展させ、国内外で発生しうる災害を考慮したエネルギーに関する新たなインフラ構築について、海外との研究プロジェクトを推進している。その様な研究プロセスがトリガとなり、将来の研究の可能性を提供し、プロフェッショナル資格取得とともに、さらなる挑戦へのポテンシャル取得を可能としている。