2015年のCOP21パリ協定を受け、我国は2013年度比で温暖化ガスを26%減、運輸部門においては2013年度の225百万トンに対して27.4%の削減を実行することを閣議決定しています。このような中、全世界でも温暖化対策として自動車の電動化が急速に進みつつあります。これまで、私はエンジンも含めて、トランスミッション、バッテリー、モーターといった自動車用パワートレインのコンポーネントの要素やシステム全体の研究を実施してきました。例えば、図は充放電性能を予測するため、リチウムイオンバッテリーのモデル化を表した図となります。活物質が拡散し、電極表面で電気化学反応により電流と過電圧が生じる内部現象はまさに機械工学と電気化学の境界領域の研究と言えます。このような、モデル化を通し、複雑な機構を有するハイブリッド自動車の構成要素(主にはバッテリー、モーター、インバーター、エンジン)の最適化により高効率な自動車を目指した研究を実施しています。その一方で、日本全体を見渡してみると、現状の電力構成のままで自動車の電動化が急速に進むと結局は火力発電による電力が増大し、本来、CO2を抑制するはずの電動車がCO2を増大させる結果となってしまうことに気がつきます。そこで、プラグインハイブリッド車や電気自動車を運輸物流部門の真の温暖化対策の切り札とするため、自動車単体の研究から、電力エネルギーと協調しながら最適化を施す研究に広げなくてはなりません。つまり、これまでの私の研究はエネルギーが自動車に投入された後(タンク)からタイヤ(ホィール)で動力に変換される過程の「タンク トゥ ホイール」の研究でしたが、今後は、電気をつくるときに必要となる資源の採掘(井戸)から自動車へ導入される過程も考慮した「ウェル トゥ タンク」の評価システムの研究も大切であると言えます。このような観点から、環境・エネルギー研究科の他の研究者と連携し本プログラムに参画しました。例えば、中垣隆雄教授は安価な石炭火力発電による再生可能エネルギーの調整力確保であれば、CO2の分離回収と貯留および固定化(CCS/CCUS)を重要視しています。また、原子力発電の再稼働に向け、福島第一原発で問題となったシビアアクシデント時に発生する水素の処理システムについても研究しており、CO2の排出を大幅に抑制した安全な電気エネルギーの創出にむけた研究を展開しています。また、中西要祐教授は、環境を配慮した再生可能エネルギーを含む分散化するエネルギーリソースとそのエネルギー消費である社会活動とを最適にネットワーキングすることを目指しています。このため、エネルギー需要動向や社会制度を前提に、超短期の設備計画、その瞬間瞬間の保護運用制御の応用技術に対して、予測技術、不確実性を含む最適化技術、投資戦略を含む計画技術、システム制御・シミュレーション技術などの基盤技術を適用していた研究を実施しています。
以上、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車の高効率化を通して、様々な教員と連携しスマート社会に貢献する研究を展開します。