修了生インタビュー 深澤篤さん

2024.10.28 / 近況
横浜国立大学 |

深澤 篤 さん 2021 年度修了(現職:ENEOS株式会社)

エネルギー・マテリアル系/横浜国立大学 跡部研究室

 

Q. PEP への参加を決めたきっかけは何ですか?参加してみてどうでしたか?

指導教官の跡部先生に PEP プログラムのことを勧めていただきました。私が博士課程に進学した時には、学内に同期がおりませんでした。そのため、PEP に参加することで、博士学生同士のつながりが作れそうだと興味を持ちました。それから、私はエネルギー分野に興味がありまして、PEP はエネルギー関連のプログラムとして高度な授業を受けられること、見学や演習が豊富であることから、参加を決めました。

実際に参加してみたら、合宿などで他大学の学生と話す機会がたくさんあり、それぞれの専門分野を知ることができました。今は研究開発職として企業で働いていますが、「この技術はこの研究室がプロフェッショナルだから、その論文を読んでみよう」とか、PEP のつながりを実務に活かすこともでき、とてもよかったと感じています。

 

Q2 PEP の必修科目を受講した感想について教えてください。

最も面白いと思った演習は、太陽光パネルが一面に敷き詰められているメガソーラーの施設を見学したことです。小規模なものはイメージが付くのですが、大規模にしたときにどういう運用をしているのか、どうメンテナンスをしているのかのお話を聞くとともに、細かく質問もできて非常に良かったなと思います。また、私は今、ENEOSに勤めていますが、高度技術外部実習の中で、ENEOSの製油所の見学やトラブルシューティングを考える演習があり、現場の社員の方々とディスカッションをしました。話をする中でこういう方たちと一緒に働きたいなと思い、就職先に選びました。実際に見学してその会社の良さを知ることができたのは、非常にいい経験になったと思います。また、事業創造演習も非常に面白かったと思っています。私は理系なので、大学でも理系の科目を中心に受講していましたが、PEP プログラムでは、人社系の授業や演習も受講できました。特に、ブルーオーシャンを狙う戦略の考え方や、新規ネタを見つけるための基礎を学ぶことができたのは非常に面白かったです。会社に入った今も、そういった戦略のやり方については、PEP の授業が参考になっていると思います。

国際標準化演習も、将来的にビジネスをする上での特許戦略や、技術の標準化戦略とその重要性などを事前に勉強できたのは入社後の強みになりました。私は今、研究開発から事業フェーズのようなところにも携わっていますが、国際標準化やオープン・クローズ戦略といった話題は切り離せないものです。広いエネルギーの知識や、人社系の知識を身につけられたのは、PEP プログラムに参加したからこそと思います。

 

Q. PEP を通して、どのような力が身につきましたか?

PEP プログラムを通して、13 ある連携大学それぞれの専門技術を深く学ぶことができたので、研究スキルや専門知識が身につきました。特に、自分の専門ではないほうの、電力系の知識はかなり新鮮でした。例えば電力の需給の考え方など、会社に入ってから必要になる知識を事前に学べたのも非常に良かったと思います。加えて、特に副指導教員やコンサルティング教員とのやり取りの中で、人を巻き込む力や行動力も身についたと思います。私の場合は弊社の佐藤にコンサルティング教員を、早稲田大学の関根先生に副指導教員をお願いしていたのですが、ディスカッションや助言をお願いして自分の研究をより充実させていく力などは、今も役に立っています。社内にもいろいろなグループがありますので、自分にはない知識を他のグループの人からヒアリングするなどの行動力は、この PEP プログラムで身についた力だと考えています。他にも、研究開発を回していくなかで新しい事業を作っていくために、新規ネタを見つけることは非常重要になるのですが、事業創造演習でその基礎的な知識や演習を通した戦略の考え方を学べたことは面白かったですし、今も役に立っています。事業創造の知識は、入社後のアドバンテージになると思います。

もし、PEP プログラムに入らなかったら、淡々と自分の研究を進めていたとは思いますが、プログラムを通した幅広いエネルギーの知識や人社系の知識は身に付けられずに修了したのではないかと思います。特に、人社系の授業は、こういうプログラムがないと受講する機会が少ないと思います。

 

Q. PEP の修了要件の一つになっている他機関との共同研究の感想を教えてください。

私の場合は、弊社の研究メンバーと共同研究をしていました。厳しいコメントをいただくこともありましたが、しっかりコミュニケーションを取り、相談しながら研究活動を進めていました。何回か打ち合わせをして、実験をして、打ち合わせをして…というフローを何度も回していき、博論の形に仕上げることができました。その中でも、想定していたデータが出なかったりとか、難しいところはありましたが、両者でしっかり考察を深め、論文を調べたり、いろいろなアドバイスをいただいて、共同研究としての成果を出すことに繋がりました。Chemistry として面白いところを解明していくような大学の研究とは異なり、会社での研究は、将来的にビジネスに繋げることを考えていて、こういったところをターゲットにすると付加価値がある物を作れるのではないか、売れるかもしれない、など、企業目線の考え方も取り入れた研究を共同研究としてできたのは非常に面白かったと思います。早稲田大学の関根先生にもいろいろ研究を見ていただいて、新しい解析方法を教えていただいたり、関根研究室の装置をお借りして測定させていただいたりしたのですが、共同研究先とはまた違った視点でのアドバイスをいただくことができました。自分の研究分野に近いところだけだと知識や考え方が偏ってしまうので、様々な専門性の方にコメントをいただくと、また違った視点で研究が進むので、より研究が充実したものになるかと思います。

 

Q. 今の職業を選んだ理由とキャリアイメージについて教えてください。

きっかけはいくつかありました。最初にお話しした、高度技術外部実習は一つのきっかけでした。また、弊社の研究メンバーとの共同研究の経験も理由の一つです。本当に研究に対してストイックで、一緒に研究したいと思いました。そして、学生時代の研究を通して水素エネルギー関連に興味を持ち、現在勤めている会社でその開発を進めているため、自分がやりたい研究ができる可能性が高いという、研究内容で選んだ部分もありました。

今後のキャリアイメージは、私は研究がとても好きなので、これからも研究をベースにキャリアを積んできたいと考えています。将来的には、新規ネタを自分で見つけてきて、そこから種を育てて事業化させるようなところまで経験したいと思っています。ですから、今やっている研究から事業化までのフェーズをある程度経験した上で、将来的にはリーダーとなって、新規事業を立ち上げていくところを頑張っていきたいと思います。

 

Q. 後輩たちにメッセージをお願いします

PEP プログラムに入ることで、自分の研究室を越えた教員や学生との繋がりもできますし、幅広く深い知識を手に入れることができるので、もし博士進学に興味があるのであれば、PEP プログラムに参加すると、財産になると思います。PEP プログラムに参加して、様々な博士学生とコミュニケーションをとって、将来的にもいろいろ話ができるような関係を構築しておくと、研究していく中でのアドバンテージにもなりますし、アカデミアでなくて企業に行く人も、そういった仲間ができると思いますので、人との繋がりをポイントにしてこのプログラムに参加してもらえると非常にいいのではないかと思います。